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最高裁判所第一小法廷 昭和34年(オ)437号 判決 1961年12月27日

上告人 呉聖煥

被上告人 姜点粉

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人坂井克己の上告理由について。

所論は、上告人と被上告人とは、昭和二十六年十二月二十一日婚姻をし、昭和二十九年五月二十五日離婚したものであるが、上告人も被上告人も、ともに韓国の国籍を有する外国人であるから、被上告人の本訴請求の当否を判断するには、両当事者の本国法(婚姻に関する韓国法)をもつてすべきであるに拘らず、原審がこれを日本の法律をもつてしたのは違法であるというにあるが、所論の前提となつている婚姻とか離婚とかという事実は、原審で主張、判断がなく、原審の確定した事実にも副わないものである。

被上告人の本訴において主張する請求は、上告人の被上告人に対する内縁関係破棄の不法行為を原因とするものであることは、弁論の全趣旨を通じて窺われるところであるところ、原判決(一審判決引用)もまた、挙示の証拠関係に照らし、上告人と被上告人とは訴外呉弼根の媒酌によつて結婚式を挙げ、いわゆる内縁関係に入つたものであること、上告人はそれ以前より訴外梁花子と関係があつたに拘らずこれを秘して被上告人と婚約したものであること、被上告人と同棲後も上告人は梁花子との関係を絶たず、つねに外泊を続け、被上告人に対しては一片の愛情も示さなかつたこと、ことに昭和二十八年十月頃からは殆んど被上告人のもとに寄りつかず、昭和二十九年五月頃には梁花子を伴ないきたつて被上告人と一緒に暮そうなどいい出し、被上告人が反対するや、たとえ被上告人と別れても梁花子とは別れないと言明したため、被上告人は同月二十五日両親と相談するため実家に帰つたものであること、その後円満に解決するために種々の交渉がなされたが上告人の聞くところとならず、かくして上告人と被上告人との間の内縁関係は上告人のために不法に破棄されるに至つたこと等の事実関係を確定して、被上告人の不法行為の主張を容認したものであること、判文上明らかである。

右の如く本件上告人の行為を被上告人に対する不法行為と観る以上、その債権の成立及び効力は、その原因たる事実の発生した地の法律によるべきものであるこというをまたないところであるから(法例一一条参照)、原審が本件の原因たる事実の発生した日本の法令を適用して判断するに至つたのは、正当というべきであり、論旨は理由がない。

よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高木常七 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

上告代理人坂井克己の上告理由 省略

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